在宅医療を頑張る薬局特集!

「看取り在宅」に全力で取り組む! 全国でも数少ない薬局

  • 「看取り」に注力する全国でも珍しい取り組み
  • 無菌調剤のためのクリーンルームを準備。在宅に力を注ぐ会社としての姿勢
  • エリアを限定した店舗展開をする事でエリア内での在宅の「質」を追求

「最近、よく話題になる『在宅』ってどうなの?」と興味はあるけれど、自分に向いているのか、自分にやれるのかどうかと悩んでおられる皆さんのために、愛知県豊田市を中心に在宅医療に力を注いでいる薬局として知られる、ヤナセ薬局の在宅医療部・エリアマネージャーの宇野達也さんに、自宅で療養されている患者さまの事例についてお聞きしました。

  • ヤナセ薬局では、在宅医療をどのように支えていますか。

  • ヤナセ薬局では、2001年に在宅医療チームを設立。2008年には在宅医療部として組織を強化しました。在宅医療部は、センター調剤薬局・豊田厚生病院前店の2階にあります。訪問エリアは、豊田市、岡崎市、みよし市、長久手市、日進市、名古屋市東部など。
    在宅医療は数人の薬剤師だけで成り立つものではありません。地域のなかにいくつもの店舗があることが条件になります。その点、私たちは愛知県内に28の店舗を集中的に展開しており、その条件を満たしているといえます。
    当社は医療機関、訪問看護ステーションなどと連携して、在宅注入療法(HIT)の導入から実施をサポートしています。末期がんや筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの難病の患者さま宅を訪問し、地域でも有数の在宅医療実施薬局となっています。
    終末期の患者さまのベッドサイドで問われるのは、知識ではなく人間性です。そうした人材の育成を目指し、医療人としての心構え、人間性、社会性を身につける教育を行なっています。そして将来的には「訪問薬剤師ステーション」の設立を目指しています。

  • 在宅医療部ではどのような取り組みをしていますか。

  • 現在、在宅医療部は2人の専任薬剤師とサブメンバーで構成されていますが、正直なところ手いっぱいの状態です。最近、事務担当者が配属されて、2人のスケジュール管理をしてくれるようになり、とても助かっています。
    専任の薬剤師は忙しい業務の合間を縫って、栄養サポートチーム専門療法士や、緩和薬物療法認定薬剤師の資格を取得。医療機関、訪問看護ステーション、居宅支援事業所との情報の共有化にも力を注いでいて、学会発表や論文投稿なども積極的に行なっており、在宅医療業務のレベルアップを図っています。
    また、人の死にかかわることも多く、患者さまやご家族から学ばせてもらうこともたくさんあります。薬剤師としてできることは多くはありませんが、少しでもできることはないかと自分に問いかけています。
    在宅医療部では専任メンバー以外にも有志が集まって研修会をしています。双方向型のグループディスカッションで、事例を発表しあいながらスキルを高めています。

  • 患者さま宅訪問までの流れはどうなっていますか。

  • 在宅訪問のスタートは、医療機関からFAXで送られてくる1通の処方せんから。処方せんだけではわからない住所やサマリーなどの情報、家族背景などを電話で問い合わせます。同時に緊急性を確認し、翌日以降でも大丈夫な場合は、訪問日時の調整などをします。2回目からは定期的な訪問になります。ドクターの往診日によって訪問する曜日などが決まってきますが、私たちが訪問している患者さまの75%はがんなので、状態が目まぐるしく変化します。当社の調査では6.97日にひとりが死亡されており、訪問期間としていちばん多かったのは7日間でした。(調査期間:2013年9月1日~2015年12月31日) ですから今週配達しても、来週も来られるとは限りません。そういった意味では、1回1回の訪問に全力を傾けなければならないと考えています。訪問が予定通りにならないことも多いので、調剤の店舗と並行して行なうのは難しく、ヤナセ薬局では「在宅医療部」として専門の部署を設けています。

  • 患者さま宅にはどのような物品を持っていくのですか。

  • 配達するのは内服薬だけでなく、モルヒネや細かい指示のある注射薬などもあり、クリーンルームで無菌調製しなければならないのも、一般の調剤薬局での対応が難しい点です。ヤナセ薬局はこうした課題をクリアしている全国的にも少ない薬局だと思います。
    患者さま宅に着いたら、モルヒネなどの在庫確認だけでなく、注射器のデバイスやチューブ、穿刺部保護テープ、ガーゼなどの在庫も、訪問看護師が注射するときに不足のないよう確認します。こうした物品は訪問看護ステーションによっては薬剤師が準備する場合もあり、処方せんにない物も忘れないよう持参しなければなりません。

  • クリーンルームでの作業の手順を教えてください。

    • 全国でも珍しいクリーンルームを有する。
      入室する前に防護服を着てエアシャワーを浴びる
    • 大型のクリーンベンチを設置。
      作業前にクリーンベンチを念入りに消毒します。
    • 作業中は汚染の可能性のあるところを何度も消毒。
      患者さまの身体に直接入るため、非常に重要。
    • 輸液に薬剤を注入する
    • シール装置を使って厳重に密封して、完成です!
  • 現在担当されている患者さまの事例を教えてください。

  • ご本人の希望により、2015年3月から在宅での療養を続けている患者さまがおられます。いつもは2週間に1回の訪問ですが、この日は1週間で処方せんが出されました。24時間、栄養剤の点滴が必要で、ご家族も初めは不安だらけだったそうです。点滴交換のアラームが鳴り出すとあわててしまって…、最初のうちは何度か電話でご説明することもありました。
    私たちが訪問を始める前は、ご家族が薬局に出向いて処方せん通りに薬をもらってくるだけで、納得がいかないことがあっても、あいまいなままだったそうです。私たち薬剤師が自宅にうかがうことで、安心して質問できるし、ドクターとの橋渡しもしてもらえると喜んでいただいています。
    「直接見てくれている薬剤師さんは信頼できるし、専門知識があって、万一点滴の交換に失敗しても、すぐ駆けつけてくれるという安心感があります」と仰っています。

  • 患者さまやご家族とのコミュニケーションは?

  • ちょうどこの日は患者さまが風邪気味で、「市販の風邪薬を飲ませたあと、牛乳を飲んだら下痢をしてしまった」という相談を受けました。「薬との飲み合わせではなく、おそらく牛乳を消化する機能が、加齢により低下してきたのではないか」とお答えすると納得されたようでした。
    病院のほうがリスクは少ないと思うけれど、最期までお世話をする決意をしているというご家族。「ありがとう。悪いね」「お母さんはいないか?」と発語も多くなったそうです。
    「病院では本人の不安が強く、夜徘徊していましたが、自宅ではコミュニケーションも良好です。家族全員で協力して看護していきたいと考えています」と話されています。
    在宅医療には、ご家族の協力が不可欠です。私もその一端を担わせていただけることに、やりがいを感じています。初めは会話もままならなかったのに、訪問するたびに少しずつお話ができるようになってきました。ドクターも「僕が来なくてもいいね」と仰っているほどです。
    服薬指導や薬の話をするだけでなく、患者さまが何を考えているか、どんな思いでおられるかも理解できるようになりたいと思います。患者さま宅にうかがうということは、相手のテリトリーに入るということ。その方の人生に触れる機会でもあり、「おじゃまします」という気持ちを忘れないように心がけています。

  • 実際の患者さま宅訪問の様子を教えてください。

    • 荷物を積み込み、患者さま宅へ出発
    • 患者さま宅で、薬や注射器などの在庫を確認
    • 24時間作動し続ける自動点滴装置
    • 患者さまとしばしのコミュニケーション
    • ご家族との情報交換も大事な仕事
  • 在宅医療には連携が重要だと聞きましたが。

  • 大きな病院を退院して在宅で療養を開始する際、かかりつけ医がいない場合は、退院支援コーディネーターが自宅近くのドクターを紹介することがほとんど。そこから患者さまの状態にあわせたチーム作りが始まります。ヤナセ薬局の在宅医療部では現在、20の医療機関、18の訪問看護ステーション、62の居宅介護支援事業所と連携しています。
    患者さま宅には曜日ごとに医師、リハビリスタッフ、看護師、入浴サービス、飲込み訓練のため言語療法士などが訪れます。そのなかに薬剤師も参加しています。薬剤師としての専門的な知識やスキルに基づいて意見を述べたり、他職種と協力しながら患者さまを支えていきます。
    患者さま一人ひとりによって、チーム編成はまったくちがいます。定期的にケアマネージャーを中心とした担当者会議が行なわれますが、普段は看護師が記入したファイルから必要な項目を転記して、情報共有しています。

  • 他職種と信頼関係を築くために努力していることは。

  • 他職種の勉強会にも積極的に参加するようにしています。顔を出していると「あの時はありがとうございました」とか、「頼みたいと考えている患者さまがいるのでよろしく」などと、ネットワークが広がります。コーディネーターさんも来られているので、名刺交換することもあります。
    ヤナセ薬局のモットーはとにかく断らないこと。調剤薬局だと薬剤師と事務員しかいませんが、在宅医療ではさまざまな事業所の人と交流するので、やりがいがあります。地域に根ざしたい、貢献したいという人に向いている仕事だと思います。

  • 今後の在宅医療の展開について教えてください。

  • 近年は、国の方針により病院は早期退院を目標とし、手術が終わったらすぐに退院させるところが増えています。一方、患者さまを自宅で看取りたいと希望されるご家族も増えています。病院では何かと気を使うけど、自宅ではノビノビ過ごせるためか、急にご飯が食べられるようになるなど「自宅の不思議な力」があるように感じています。
    今後、在宅医療の役割は、ますます大きくなるでしょう。がん患者さまも自宅で看取るのが当たり前の時代がやって来ます。薬剤師にも、末期がんなどの難しい症例に対応するスキルが求められるようになります。看取りまでできる薬剤師を増やすことも、私たちの使命だと考えています。地域に根ざして活躍したいという若い薬剤師を迎えて、一緒に頑張っていきたいと思います。

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